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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記12月16日(日)


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「終戦日記」を読む 野坂昭如   2005年7月刊

昭和20年8月終戦を迎えた年、作者野坂昭如は14歳だった。神戸市で空襲で焼け出され親権者から離れ、家も失い命からがら、親の知り合いを頼って福井県春江町に妹と二人で疎開していた。やがて作者は唯一の家族である妹を失うことになるのだが、幼い妹の亡き骸を一人で埋葬する立場に立つことになる。まさに「蛍の墓」のモデルだったのだ。本書は作者が集めた終戦前後の何人かの「日記集」を柱に当時の作者の目から見た解説と自分の体験から発せられた「告...白」とも言える訴えかけるような文章で綴られている。一時マスコミの舞台に華々しく登場した時期もあったが、氏の本来の持ち味は決して軽々しく扱われるような個性ではない。一貫して戦前戦後の日本の歩みと戦後史を冷静に見つめ、自己との濃密な接点の中から研ぎ澄まされた表現を試みようとする氏の姿勢は、氏を愛する人間には痛烈に突き刺さるものがあるのだ。所詮上から目線で人を切り捨てようとする某暴走老人とは物を書く姿勢が根本から違っていると思う。年を重ねても決して物分りの良い老人になろうとせず、あくまで自分の目でまっすぐな視点を失わない氏の姿勢から、我々後輩は学ぶべき点は多いと感じている。
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by tomcorder | 2012-12-16 18:57 | 日記