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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書に気4月5日(金)

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マンハッタン計画 「プルトニウム人体実験」 アルバカーキー・トリビューン編
                                  広瀬隆 訳・解説

 「マンハッタン計画」と聞くと、「核兵器製作のための巨大プロジェクト」というイメージで今まで見ていたが、実は大きく分けると二つの部門で構成されていた。すなわち、第一が「原爆開発班」であり世界的に著名な科学者が集められた。しかし第二の部門として「医学班」の存在も重要な役割を持っていた。すなわち放射能の危険性を研究した部隊であ...り、いわば「手段を選ばぬ方法」で秘密裏に人体実験を続けていたのである。一般にはまだ馴染みのなかった人類が地球上初めて生み出した、最悪の元素プルトニウムを、狡猾な手法で狙いをつけた患者に注射をし人体実験実施していたのである。ほとんどの患者に対しいわゆるインホームドコンセントなしに、「騙すように」猛毒プルトニウムが注射され、その結果として様々なサンプルが採取された。中には死後、墓を掘り起こしてまで、異常な執念で資料が集められた。プルトニウムを投与された患者の中には注射後まもなく命を落とすものもいた。また少数ではあるが、10年20年と生き延びた対象者もいた。個人差はあるが、少なくともプルトニウムの効力で寿命を延ばした人物は一人もいない。それどころか、プルトニウムのせいで寿命を縮めた患者がほとんどといったほうがよいだろう。この実験は非人道的であり、アメリカの国家的戦略として、あくまでも秘密厳守という形式で実行されたのである。おそらく個人の力では対抗しがたく、何が行われたのか知ることさえ困難な状況でことは進行した。しかし、国家権力が弱い個人を無視して強行した反人権的行為に対し、敢然と戦いを挑み、粘り強い取材活動から、ついに18名の実名を見つけ出し、誌面を通し世に問うたジャーナリストが存在した。その名はアイリーン・ウェルサム。後に「ピューリッツァ賞」を受賞した「勇気あるジャーナリスト」である。「プルトニウム」が有害な物質であるということは当時事実としては当然認識されていたはずである。つまり「承知の上」で注射による投与とその後の人体実験の結果が調査さされたのである。今から見ればショッキングなニュースだが、これはほとんど事実であり、「核開発」という国家事業がいかに悪魔的であるかを赤裸々に描いている。アメリカは恐ろしいことをやっていた。それまでしてまでも核開発を続けたかったのである。しかし、原子爆弾は製作しなくても、平和利用のもとに「原発」を進めることにおいても同じような考えが適用されると言ってもいいだろう。共通するのは「軍事目的」と「利権目的」である。わが国においても決して無関係な話ではなく、「プルトウムの直接投与」こそなくても、様々な利権がらみの力関係や、弱者にしわ寄せの来る被爆ダイナミックス等々、その権力構造はかなり類似性があるとはいえないだろうか。
by tomcorder | 2013-04-05 23:40 | 日記

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