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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記7月6日(土)

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  「サイレントウオー 見えない放射能とたたかう」 
                                 今中哲二著  2012年11月刊

著者今中哲二氏は京都大学原子炉実験所助教という肩書の学者であり、すでにマスコミにも名の知れた存在である。同僚の小出裕章氏と共に、反原発の立場からの原子力研究を続けているいわゆる「熊取6人衆」の一人である。6人衆といっても現職は作者と小出氏の二人で、本人の言葉からも「盟友」同志という認識らしい。確かに二人は同じ研究所でほぼ同じ姿勢で国の原子力行政に対峙し、厳しく提言をしてきた。しかし、本人も語っている通り、今中氏の社会に対する発信の仕方、報道に対しての露出の様子は小出氏とは少し違っている。氏の言葉を借りれば「学者としての使命」を重視しそれに徹する。「自分は闘士ではない」と率直に語っている、その意味では確かに小出氏の存在とはイメージがちがうかもしれない。しかし、今中氏はチエルノブイリの事故の後、何回も現地に向かい調査をし、汚染された環境の中でデータを集めてきた。当然福島にも早い時期で入り、貴重な資料を自らの体験の中から収集している。まさに現場で活動している学者、行動する学者である。小出氏とは違った意味で「アクテイブ」な存在といえるかもしれない。発する表現はやや控えめで、「少なくとも〇〇〇、」と言った一歩引いた発言が多くみられ鋭く煽るような口調は少ない。しかしそれだけに、具体的データにのっとった指摘には説得力があり、「断定はできないこと」「まだ証明されないこと」に対してはトーンを下げた論調となっており、「ガードの固い」発言とも受け取れる。素人の判断は軽率かもしれないが今中氏の発言中には「ICRPの資料によれば」というフレーズが多様されており、ややICRPの学説に趣を置いているのかも知れない。最近のECRRの見解や内部被曝を危険視する見解には距離を置くという立場らしいが、この辺はなかなか、素人には難しい判断だ。しかし時間の経過から内部被曝の問題も徐々に解明され、新しい統一見解がでてくるのかも知れない。
いづれにしても、本書を通して提言する今中氏の指摘内容は極めて「抑制された表現」である以上「少なくてもこれくらいは守るべき」とういう基準とも受け止められ、極めてその内容の重さが感じ取れるし、素人にも「わかりやすく」説明されている点は大いに信頼できる書と認めたい。
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by tomcorder | 2013-07-06 12:16 | 日記