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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記7月11日(木)

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 「死に至る虚構」<国家による低線量放射線の隠蔽>     ジェイM.グールド ベンジャミンA.ゴルドマン 共著
                                        肥田舜太郎  斎藤 紀 共訳
                                        2008年11月初刊(PKO雑則を広める会)

2008年5月30日、国に対して原爆症認定却下の取り消しを求める、原爆症認定集団訴訟において、大阪高裁は全原告9名の認定却下を違法と判決した。その時国がそれまで無視していた、「内部被曝」の影響を認める根拠として取り上げられた文献の一つとして、本書「死に至る虚構」が重要な資料としての価値を示したわけである。この結果、国は最高裁への上告を断念し、麻生内閣は原告との全面和解に向けて基本的な合意に達した。判決文の一部に本書の引用が何ヵ所か取り入れられ、その説の信憑性が認知されたのである。もとより、本書の訳者である肥田・斎藤両氏は本業は医師であり、長年広島、長崎の被爆者の医療に幅広く携わってきた経験から、いわゆる「入市被曝」の存在についてゆるぎない体験とデータから、信念を持っていた。数々の原爆症認定訴訟にも関わってきた。そんな中で、1990年に初版発行された本書の原典を、両氏が1994年に翻訳したのである。その後その貴重さを訴えるべく、PKO雑則を広める会が2008年に再版を企画し本書が世に出ることとになった。本書は核に手をだすことになった人類が、今まで起こしてきた数々の汚染、被曝の事実を、客観的データから統計的処方により導き出した衝撃の事実を、大胆に主張した画期的な書物である。体験的に「内部被曝の脅威」を指摘していた医師や科科学者は、各国にも存在していたであろうが、かつては「科学的に論証」することが難しかった。しかし、IT技術の進歩等もあり、現代は膨大な資料を比較的短時間に処理することが可能になってきた。貴重な資料をコンピューターの力も借りて「統計学的理論」によって検証した結果、著者の主張するように、内部被曝の恐るべき爪痕が、具体的なデータとして結論づけられるようになった。チエルノブイリやスリーマイル島原発事故の影響や、各種核施設のもたらした被爆被害の実像が、論理的に証明できるようになったのである。この結果を福島原発事故にも当てはめて考えれば、今後予想される被害のアウトラインも想像できる。現に甲状腺への発癌等の影響の可能性、2011年に見られた乳幼児死亡率の一時的な有意差など、政府筋の主張する「安心説」とは裏腹に深刻な実態が見え始めている。今後内部被曝の実態がより認知され、核の脅威が正しく認識されなければ人類に未来はない。
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by tomcorder | 2013-07-11 20:04 | 日記