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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記8月8日(木)

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  「検証 尖閣問題」   孫崎享  2012年12月刊

 揺れる領土問題は今日もなおニュース番組の話題になっている。特に、昨年の「国有化騒動」に始まった中国国内での反日デモ、反日運動の反響と影響は多大なものがあり、領土問題に関わる外交の難しさを広く露呈することになってしまった。日本が抱える領土問題は北方領土、尖閣、竹島の3地域についてであり、それらは個別の問題であると同時に、共通する要素も秘めている。いつでもどこでもそうであるように、領土にかかわる問題はナショナリズムのもっとも突出する案件である。そして、ナショナリズムに流れを任せれば、行き着くところは「武力衝突」と相場はきまっている。多くの歴史がそうであったし、我が国も例外ではない。しかし、国民の貴重な生命をかけて闘った先に何があるのかと考えれば、多くの国が「できれば軍事衝突は避けたい」と考えるのが常識ある国家の判断ではないだろうか。「尖閣は紛れもなく日本の領土である」と唱えるのは簡単であるが、果たしてどれほどの歴史的事実を客観的に把握しているだろうか。氏の説によれば「意外なほど」に日本人は尖閣をめぐる過去の経緯を理解していないという。日本にとって「都合のよい」ことはよく情報が流されているが、「都合の悪いこと」はマスコミや教育界でも知らされていないことが多いという。自国の主張を声高に叫ぶだけでなく、「相手国の視点で」考えてみると、領土問題というのはそれほど簡単な論理では解決できないということがわかってくる。武力に訴えることは日本にとっても極めて危険な行為であり、そうならないように工夫して行くのが「理性ある外交」というものだ。そういう意味からも、氏は「棚上げ」は考えられる最上の選択だという。かつて日中間には知恵を出し合う関係があった。このような緊迫した関係になってしまった一つの原因には、政権担当者の「理解不足」と歴史に対する「認識不足」がなかったとは言えまい。過去に簡単に戻るわけにはゆかない。しかし、「武力衝突も辞さない」などと考えるのは、いかにも浅はかであるし、未来に対する冒涜でもある。今国民が冷静さを取り戻さないと日本はとんでもない道を進むようなことにならないか、と心配するのは作者一人ではない。
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by tomcorder | 2013-08-08 20:57 | 日記