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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記4月20日(日)

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  「悪用される科学」      生越 忠   1981年10月刊

  作者生越忠氏は1923年生まれの地質学者。発刊当時は和光大学の教授という立場であった。氏は東京大学理学部出身であるが、本著の前書きでこともあろうに「ウソの学問が一番たくさん作り出され、それがあたかも真理であるかのように教えられている大学は他ならぬ東京大学だ」と豪語している。この言葉の裏づけとして、戦前戦中の歴史分野だけに留まらず、国家の都合のために様々な「うその学問」が利用され少なからぬ学者がこれを世の中に広めたという。確かに歪んんだ時代の中でそういう事実は否定できない事実であったようだ。
 しかし、問題なのは戦後、大学は「帝国」という名前を外したが、中身は依然として「国のために都合よく機能する本質」を排除することができなかったという。
公害問題や原発問題に直面する中で、権威ある有名大学の学者たちがどのような学説を訴え、住民に対してどのような立場で臨んできたかを論じれば、科学者と呼ばれる人々の中には、極めて悪質な御用学者が潜んでいることを作者を警告している。
特に本書の中では筆者の専門領域に関わって、刑事事件や空港、ダム等の国土開発に絡む学者の果たした足跡。原発建設に関連した各種地質調査に関わる様々なごまかしと不当な専門家による特定価値観支持。科学実験への偏った過信やおごりによる過去の事故の原因。環境に関わる住民運動の流れの中で、御用学者たちのとった立場や振る舞い。等々を具体的事実に基づきに検証し、激しく厳しく、権威ある「科学者」たちの犯してきた過ちを追及している。
本書は3.11の起こるちょうど30年前に出版された。にもかかわらず、原発事故の本筋を真っ向から問い詰め、科学者や専門家の在り方を徹底して問題視している。福島第一原発事故後にマスコミに登場した専門家、学界の権威がどのような見解を力説したかを振り返れば、氏の主張を理解することも容易である。確かに、頻繁に登場した顔の中には「東京大学」という肩書が多く見られたかもしれない。日本を縦断する「権力構造」の中に、科学者も取り込まれ、いわゆる「原子力ムラ」が強大な腕力・権力を広げている現在。「ウソ」がまかり通る社会が継続するとしたら、悪夢である。
今渦中のSTAP細胞問題も一般人にはわかりにくいことが多いが、科学の世界もいろいろ複雑な問題を抱えていることは少なくても感じ取れる。
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by tomcorder | 2014-04-20 14:27 | 日記