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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記8月1日(金)

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「カナダはなぜイラク戦争に参戦しなかったのか」 吉田健正著  2005年7月刊

 元カナダ首相クレテイエン氏は言った。「世界の貧しい国々と民衆が彼らに対する強大国の扱いに対し大きな憤慨を抱いている。他者に屈辱感を与えるほど権力を振るってはいけない。・・・・西欧世界は傲慢で自己満足しており、貪欲でしかも限度を知らない。」あるいは「サダムフセインがすばらしい民主主義者だとは思わない。別の指導者がいたらいいと思う。しかし、それは世界の他の多くの指導者についても言えることだろう。(大量破壊兵器を所有している国が多数あり、そのすべての国を攻撃することはできない。)」
正に当を得た発言と言わざるを得ない。国連での決議を取れずにブッシュ率いるアメリカは単独でイラク攻撃を決行した。欧米を中心とした同盟国に呼びかけ、連動して対イラク戦争に加担するように執拗に圧力をかけた。当然わが日本国にも踏絵を踏ませるように厳しい圧力が加わった。そして時の政権担当者小泉純一郎総理は、「ブッシュが大量破壊兵器は必ずある言っているんだからあるのだろう」「非戦闘地域がどこかなんて私にわかるわけない」などと言って、もろ手を上げてアメリカ支持を宣言し、非戦闘部門に限定し自衛隊の海外派遣を決行した。これは「日米は特別な関係にあり、信頼関係を保つためにも必要な選択だった。」というのが日本政府の大義名分である。しかし、米国と「特別な関係」にある国は日本以外にもある。英国、カナダ、オーストラリア、韓国、メキシコ・・・・等があげられるが、これらの国はあの時、全ての国がアメリカに同調したのだったろうか?・・・
答えは「No」だ。米国と国境を接している、切実に「特別な関係」にあるカナダとメキシコはアメリカの要請を拒絶し、イラク戦争不参加の立場を貫いたのだ。
 カナダもメキシコも軍事的には決して大国とは言えないだろう。カナダの軍事費は日本と比較してもずっと少ない。つまり同盟国たる米国に安全保障の依存度が高いといえる。それなのに、米国の失望を覚悟の上で、参戦拒否を時の政権は選択したのだ。それには、確固たる国の基本方針である、国連中心・国際協調主義が国是として存在しており、いくら隣の超大国の要望といえども、毅然たる態度で主張を通したのだ。国連のアナン事務総長は2004年9月16日、BBCのインタビューに答えて言った。「イラク戦争は国連憲章上違憲だった。」
 当時、国土の面積がロシアに次いで世界2位のカナダは、GDPは米国の10分の1、軍事は40分の1だった。そのカナダがとった立場とは、
①国連の支持を得ていない
②大量破壊兵器存在の証拠がない
③国際法上「先制攻撃」に正当性がない
が主な主張だった。今にして思えば極めて理にかなった判断と言える。
勿論、米国の失望を招いたことは否めないが、米国からの「報復」は特に大きなものはなかった。それどころか、ロジャー・F・ノリエガ米国務省次官の言葉を借りれば「緊密で、永続的な関係。時には意見を異にするが、・・・全体的な関係は建設的で協力的で緊密だ」と述べられている。「米・加は相互に依存しあったいる。制裁などありえない。」ということの弁明であろうか。
カナダの「国際協調主義」は国連安保理を強力に支持しており、日本政府が最近やっきとなって変えようとしている、「集団的自衛権」(2国間主義)とは似て非なるものである。
作者は、強く主張する。「米国政府の判断よりカナダ政府の判断の方が正当性があったことは明白だろう。」「米国は富と自由の憧れの的からまるで<鬼の形相をした恐れられる国>と変貌した。」正に「鬼の形相をして」オスプレイが日本各地に往来している現実だ。
それにしても我が国の、余りにも価値観の違う政権の姿勢はどうだろう。世界の中でも「突出した対米追従主義」の国と映っているにちがいない。クレティエン首相の言う「独立した主権国家として、我々は時に意見が合わなくてもよき友人でいられる」という言葉が安倍首相の耳にはどう聞こえているのだろうか?
 
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by tomcorder | 2014-08-01 16:58 | 日記