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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記6月14日(日)

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  「東京ブラックアウト」        若杉列   2014年12月刊

 大反響を呼んだ「原発ホワイトアウト」に続く第2弾。前作発表時に話題になった通り、作者「若杉列」氏は現在霞ヶ関のとある官庁に勤務する現役官僚であるという。さぞかし「犯人捜し」が激しい勢いで進められたことと想像するが、その割には以後関連した人物の特定は聞いていない。初作が発表されたころ、某テレビ番組降板騒ぎでマスコミを賑わした元経産省完了のK氏ではないかとの憶測が飛び交ったが、本人がはっきり否定したという情報は流れている。「いずれ顔は割れてくるだろう」との大方の見方ではあったが、今になってもそれに関した情報をマスコミで聞いたことがない。まことに不思議で真偽のほどを疑いたくなる話ではあるが、まさかこの想定事態が「フイクション」だとしたら、それは読者に対する「背信行為」になってしまうだろう。
 「現役官僚」という説明の通りだとしたら、片手間で原稿が書けるほど官僚というのは「暇」があるのだろうか、という批判の目で作品を見たくもなる。フイクションとは言っても内容は実にリアルで、実名こそ出していないものの、まるで現実の政官界の出来事を綴っているかのような「臨場感」に満ちている。おそらく実態もこのストーリーに近い状態で進行しているのだろうと、容易に想像できる。本作品はなかなかのアイデアに触発されたストーリーで、単純に「フイクション」だとするととても好奇心をそそる、スリリングな展開で読む者を楽しませてくれる。しかし、内部事情を熟知した役人の目で綴った、ノンフイクション作品としてみれば、天下を揺るがす大告発ノベルとしての性格を帯びてくる。とても「笑ってはいられない話」になってしまう。
本書は「娯楽本」なのか「告発本」なのか?
スタイル的にはどちらとも取れるだろう。しかし、その内容の構成と生々しい政治の匂いからして、本書は日本の原子力ムラの裏表を描く「風刺本」であり、わが国の原子力行政や官僚社界への告発の書になっている。我々が見ている日々のテレビや新聞の報道の「裏側」はおそらくこれに似た筋書きになっていると思わざるを得ない。
 現政権への厳しい問いかけが続く昨今、「裏の世界」で本書のようなやり取りがされているとしたら、原発は我が国の骨組みを溶かす「亡国のシステム」と言わざるをえない。文字通り我が国は原発とともにメルトダウン、メルトアウトする運命にあることは避けられない。
「世界レベルの安全基準」を超え、再稼働にばく進する我が国の原発政策。落とし穴は限りなく存在する。次回の大規模事故が発生すれば、間違いなく「国の形」が変わる。運が悪ければ沈没ならぬ「日本消滅」の事態になる。
戦争も原発事故も一部の人間の悪意によって始まり、一部の人間は真っ先に逃亡し、責任を免れる場に身を隠す。
 本著は筆者が忙しい日々の仕事の合間を割いて、世に投げかけた、原子力村の闇の「裏側を描き出すガイドブック」のようにも読める。ガイドブックが手に入れば、ひょっとして、間違った道を進み自爆しないような進路を、選択することが可能になるかも知れない。
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by tomcorder | 2015-06-14 18:59 | 日記