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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記2016年1月19日(火)

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 『日本外交 現場からの証言』 
                       孫崎 享    2015年8月20日刊

 話題を蒔いたベストセラー「戦後史の正体」を著した筆者が描く現代日本外交の本質。20世紀を描いた1993年に発刊された『日本外交 現場からの証言』<第2回山本七平賞受賞>に21世紀の「政治・外交の今」が大幅加筆され再発行されたものである。
 著者孫崎享氏は旧満州生まれの元外交官、英国、ソ連、米国、イラク、カナダ駐在の後、ウズベキタン大使、駐イラン大使を歴任し、2009年まで防衛大学校教授を務めた。その後現在は東アジア共同体研究所所長の肩がきを有し、マスコミに多出し、新聞・テレビ・インターネット・書籍等々幅広く活動し、多忙な日々を送っている有名言論人である。彼のヒット作「戦後史の正体」は22万部を突破したという。
 本書は全体が2部分から構成されており、1部は前作発表後から現在(2015年8月時点)に至るまでの政治外交史を眺めての、特徴的な事件や観点をまとめたものであり、今回新たに加筆されたものである。そして第2部は前作「日本外交現場からの証言」そのものの再発行である。作者の言葉を借りれば、二十数年の歳月を経て、「過去の自分」と対話した結果が、「自分の主張はあの頃と少しも変わっていない」だった。つまり作者の外交に対する価値観は今もぶれておらず、「日本は自分で国益を判断し行動すべきだ。同盟とはお互いの国益が合致した時に発生するもので、互いの国益が変化すれば当然、同盟も変化する」との主張だ。皮肉なことに前作を発表した後、米国の「一国支配」が始まり、日本国内では「とにかく米国の言う通りにすればよいのだ」という空気が政・官・言論界を覆うようになったという。しかし、今世界は変わった。「米国に従っていればよい」「隷属していれば日本は得をする」という時代は過去のものになりつつある。つまり時代は20年を経過し著者が前作を発表した時の状況に戻ろうとしていると説く。だからこそPART2の内容そのものが、今この時点で役に立つ時代に入ったと語気を強めている。
 具体的に例を挙げてみよう。
 PART1を通して述べられていることは
・冷戦の終結が米国の戦略を変えた。
・米国の戦略、価値観に基づいて進められた日本社会の構造改革だった。
・米国隷従による日本の国益の損失。
・日本が米国に従属的だった歴史・米国が日本に隷属を求める分野。
・国際環境の変化による米国一極支配の崩壊。
・時代はぐるり一回りして元の位置に戻ろうとしている。
 等々である。
 他方、第1作目であるPART2で展開されている内容は、
・外交の第1歩は価値観の違いの認識。
・親善が外交の中心でよいか。
・情報収集、分析。
・新しい外交政策の模索。
・政策決定過程。
・外交交渉。
  等々である。
現在の安倍政権の振る舞い方は「孫崎的観点」から見ればどう映るであろうか?TPP問題、集団的自衛権容認、沖縄に過重負担を強いる在日米軍基地、等々どれをとっても米国隷従のスタンスは旧態依然としている、というより以前にもまして「盲目的」になっている。昨今話題をまいた「アジアインフラ銀行」に関連して言えば「英国の振る舞い」はかつてのような固定的なものでないことは象徴的だ。他の欧州の国々とて、個々の国益を反映した外交方針の選択をしている。しかし我が国はどうだろう。情勢判断を間違えたのではないか。もう「対米追従」だけでは日本の国益は達成できない。それどころか下手すると「米国と心中」あるいは「米国の肩代わり」をして「影武者」になってしまうかも知れない。「米国の仲間としてテロの対象国へ」と言った深刻な問題も現実になりつつある。
 外交の姿勢の間違いが不幸な歴史を作ったのは衆知の通りである。今また、「新たな間違い」を犯さぬよう、著者ならずとも今後の政治・外交の動向を厳しく監視する必要に迫られている。

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by tomcorder | 2016-01-19 18:10 | 日記