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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

読書日記3月9日(水)


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 『東京が壊滅した日』     広瀬 隆    2015.6.26

 一読して思った。「すごい本だ」。福島原発事故以前より原子力ムラに正面から挑戦し続けてきた筆者ならではの渾身の一策。世界の原子力マフィアの歴史を暴き、原子力の狂気と裏で世界を動かす闇の社会を赤裸々に描きだした究極の暴露書である。
冒頭で作者が引用しているように、ECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)の予言によれば、事故を起こした福島第一原発から100km圏内では、確率的に50年間で19万1986人が癌を発症し、そのうち半数以上の10万3329人が今後10年間で癌を発症するという。
それより遠い、100~200km圏内では、50年間で22万4623人が癌発症し、そのうち半数以上の12万894人が10年間で癌を発病するという予測を発表している。
ECRRは原子力推進の立場にあるIAEAやICRPと違って、過去の実害(病気)のデータに基づいて放射能被害の予想を行う機関であり、医学的な姿勢を堅持する団体であり、より「科学的」な資料に基づいた研究、発表を続けてきた。チエルノブイリの時と比べても日本の方がずっと「人口密度」が高い。その点を考慮した上で、200km圏内で約40万人以上が癌になると予測しているのである。福島原発から300km圏内の人間の居住地(福島・宮城・山形・栃木・群馬・茨城・埼玉・千葉・東京・神奈川の全域、そして岩手・青森・秋田・静岡・山梨・長野・新潟の一部)で放射の影響が体内で徐々に進行している、と考えるのは決して無謀な推論でない。「目に見えて」変化がないということは「全く影響がない」ということではない。逆に「目に見えた」時は「既に遅い」と考えるべきではないか。現に、福島県内では18歳以下の甲状腺ガンの発生率がこれまでの「平常値」の70倍を超えている。スクリーニング効果のためだとか、チエルノブイリの時の資料との整合性の観点から「放射能の影響とは考えにくい」などと関連機関の幹部は発表しているが、単純に出てきたこの「異常な数」を根本から否定する有力な根拠はない。やはり「何らかの理由」で従来のデータより数段上の結果がでていることは紛れもない事実であり。「地域性による差がでている」と主張する学者もいるのだ。いずれにしても、5年を過ぎれば甲状腺癌発症率が「客観的に」多いか、多くないかが歴然としてくるだろう。5年目というのは今年であり、結果の分析が重要度を増し、注目されている。
広島・長崎の原爆の例から考えても、爆発時の外部被爆による被害だけが被害ではなかったことは歴然とした事実だ。アメリカは「内部被曝」による被曝被害を認めなかったが、直接「爆弾」の被害を受けなかった人々にも「放射線被害」が発症し、現在までその影響が続いていることは今や常識となった。福一起源の放射能は直接・間接を問わず今後、多数の国民の体内に進入して行くことは想像に難くない。そしてその影響の実態は容易に断定することはできない。しかし、放射線の人体への影響についての調査は米国でも秘密裏に、想像を絶するような方法で行われていた。俗に言う「プルトニウム人体実験」は現実に行われていたことが判明した。広島・長崎の犠牲者のみならず、世界中で幾多の住民が、おぞましい実験の犠牲になり原子力マフィアの生贄になってきたのだ。
原発についても似たようなことが言える。原子力発電を地球規模で広めたのは決して「平和利用のため」ではなかった。特権階級、特権グループの「金のため」が主なる動機だったのだ。原発0でも決して電力不足に陥らない日本の電力供給能力が証明された今でも、必死に再稼働に向かう、政権と電力会社の欲望の有様からも、その実態を推し量ることはできる。
 よく言われることだが、「核」と言えば原爆も原発も別ものではない。「核の平和利用」とは「爆弾の形にはしない」というだけの意味であり。原子力は基本的に「放射能」から切り離すことはできず、人類は核とは共存できな。本書では「核」をめぐって世界の国々が、どの様な「原子力争奪戦」を行ってきたか克明に描かれている。原子力を取りこもうと必死になっていたのは、決してアメリカだけではなかった。かくいう日本でさえその計画は存在した。ただ圧倒的物量、軍事力と人脈で米国がずば抜けていただけのことであった。戦後になって次々と核保有国が増えて行った。核は決して米国だけの占有兵器ではなくなり、世界中に恐怖が広がった。だが、そのハンドルを握っているのは、世界を席巻する「死の商人」たる特権階級だ。そんな1%以下のグループに地球の未来が左右されていいものだろうか。
 福島原発事故では広島原爆100発以上の放射能が排出された。これは、1950年代ネバダで行われた核実験の放射能の、6倍程度に相当するという。米国の核実験では、多数の人間が様々な放射能被害で死んでいった過去の事実がある。では福島原発事故の影響は今後どうなるのか?明るくない見通しを立てたとしてもそれを「非科学的」と切り捨てるのは現段階では無理がある。というよりか、過去の事例から判断すれば「何らかの影響」がいずれ続発するかもしれない、と考えるのがある意味妥当ではないか。
「備えあれば憂いなし。」とのことわざがあるが、こと放射能に関する限り、「憂いなし」とは考えにくい。ならば余計に、「備え、調べ、用心する」ことが必要ではないか。
 筆者が巻末で警告する通り、我が国は世界有数の火山国である。地震の数も圧倒的に多い。この国に原発を多数構えることはどういうことを意味するのか。多くの人間が危惧する通り、これは素人でも分かる単純な推論であり、極めて妥当な見識だ。未来は予測不能だが、過去から学べる範囲内でも、今後も3.11以上の未曽有な災害に襲われる可能性がないとは言えない。・・・・その時原発はどうなる?「脱原発」以上の「賢い判断」などあるだろうか?
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by tomcorder | 2016-03-09 18:24 | 日記