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渡霧吐夢世界

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薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

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「安倍政権と日本政治の新段階」 <新自由主義、軍事大国化、改憲にどう対処するか>  渡辺治著   2013年3月刊

作者の言葉を借りるなら、本書は前著「渡辺治の政治学入門」の続編である。しかし、それは最初から予定されていたものではなく、前著において予測された「保守大連立」のが先の衆議院の解散総選挙により、結果として自民党が大勝し、民主党が大敗し・自公民よる大連立の可能性がなくなり、未だかつてなかったような政治の方向性が新段階を迎える事態に至った。この急変は作者自身も短期的には予測していなかったことであり早急に新段階における安倍政権の今後を占う指標が必要になったと作者自身が、其の必然性を理由づけている。
 前回の選挙は誠に衝撃的な「自民の圧勝」という結果を世に知らしめた。しかし、氏の賢明かつ地道な投票結果の分析を熟読すれば、確かに数としては「大勝」の印象を与えつつもその内実は決して国民の強い支持を受けた、とは言い難いものであった。すなわち、「得票数」から言えば自民党も「減少」であり。その議席数には到底見合わない投票数であった。ないyぷ的に言えば、決して「自民の一人勝ち」ではなくむしろ「民主の一人負け」が目立った選挙であった、というのが、要を得た見方なるようである。「民主を離れた票」が自民でも、共産でも社民、未来でもなくその多くは、維新に、そしてみんなの党に流れた、というのが大きなながれであったようだ。「自民、民主の2大政党時代」に終わりを告げ、自民を軸にした保守連合の右傾化政権がハンドルを握る、危険性を各所に潜ませた、戦後もっとも「危険性をにおわせる政権」が誕生してしまった。「アベノミクス」というキャッチフレーズが先行する安倍政権はその支持率の好調さを武器に、原発維持、TPP参加、軍事大国化、そして改憲という、これまでの自民党政権の願望を丸出しにした、問題点満載の政策を推し進めようとしている。戦後これほど国民の福祉と安全が危ぶまれる内閣はあっただろうか。
筆者の判断によれば第二期安倍政権は、「新自由主義」と「構造主義」の合体を試みるものであり、最悪の組み合わせだという.
日米関係のしがらみや経済界の要請の中から、多様な矛盾に包まれた安倍政権の見通しは「極めて悲観的」であり、論理的に行き詰まる必然性をもっていると筆者は主張する。湯水のごとき財政出動により、強引に政策を進行させようとしても国民の生活基盤を根本的に向上させる見通しは暗く、ますます「貧富の差」が拡大する社会が危惧されるし、原発の危険性も少しも解決に向かう兆しがない、そして軍国主義化やTPPの行く先には、国民はどんな日本の未来を描き出せるというのだろう。悲観的な状況の中で、それでも筆者は「民主的勢力の主体的な萌芽と連帯を期待すると結んでいる。昨年の東京都知事選に今までになかった、新しい連帯のスタイルが始まったと氏は強調している。この芽が大のきく広がることを作者の説に従い信じたいと思うのは私一人ではないと思う。
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by tomcorder | 2013-05-26 21:52 | 日記
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  「内部被曝」     肥田舜太郎2012年6月刊
被曝内科医師、肥田舜太郎氏95歳の作。広島で被爆して以来6000人の被爆者を診てきた医師による内部被曝警告の書。筆者の67年の貴重な経験と研究を通して知り得た、多方面からの放射能による被害の実態と歴史を、科学的な視点を失わずにしかも被害者の立場に立って、詳しくわかりやすく説明している。氏は今後予想される大規模な長期に渡る国民規模の被曝に対し重大な警告をしている。氏の説明によれば被曝には大別して外部被曝と内部被曝があり、以前は内部被曝による被害は無視される傾向があった。特に核兵器保有国は原爆は破壊力は巨大だが晩発性の放射能被害はないとの立場をとり、米国政府は広島・長崎の被爆者に対しても内部被曝による被害を認めてこなかった。しかし、筆者の長年の経験・研究や、アメリカ、ソ連の良心的放射線科学者の革新的研究の結果、低線量内部被曝の脅威が徐々に「科学的に」証明されるようになってきた。その結果、肥田医師の言う「原爆ブラブラ病」と呼ぶような被曝症状が現実に起こりうることが証明されるようになってきた。世界的にも、内部被曝に重点を置く科学者の組織が新しい見解を発表するようになってきており、一口に「放射能」と言ってもその被曝のメカニズムは複雑であり、かつてのように、単純な線量の測定だけでは被害の実態を正しく予測できない、ということもわかってきた。そのような現状の中で、福島事故後の我が国の被害の広がりを予測すると、非常に心配される状況にあると言えそうである。各国の過去の事例を客観的に分析し、内部被曝の脅威を謙虚に受け止めるなら、日本の将来は深刻な被害が迫っている、と覚悟を決めねばならないようだ。その上で、我々に残された選択肢は多くはない。最早原発に期待する余裕などない。即刻に原発を止め、被曝の恐怖にブレーキを掛けねばならない。放射能は決して除去できない。一人ひとりが止める気にならなければ、日本は世界は滅亡する。95歳の作者は心から警告している。
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by tomcorder | 2013-05-19 21:59 | 日記
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「内部被曝の脅威」<原爆から劣化ウラン弾まで> 肥田舜太郎、鎌仲ひとみ著2005年6月刊

 広島、長崎の原爆投下、ビキニ被爆、そして福島第一原発事故と我が国は放射能の被害に遭遇し、多くの人々が犠牲者となり、今後もどれほどの被曝の影響を受けるのか実態が分からず、不安におののく日々を余儀なくされている。世界に目を向けても多くの国々が放射能による様々な被害を受け、多大な数の犠牲者が命を落とし、今も被曝による傷病で苦しんでいる人々が後を絶たない。プルトニウムという人工的な核種を作り出してしまった人類は、その野望を満たすためか、次々に破壊やエネルギーを生み出す怪物を登場させ、その後始末もできないまま、逆に放射能という「魔物」の餌食になってしまった。核兵器誕生の段階で外部被爆も内部被曝も心配されていたのだ。米国では開発者自らがその被曝の影響を恐れ金属成分を体内から排出すべく点滴を受けていたのだ。またプルトニウムの被害を恐れたアメリカ政府は、かつてプルトニウムを注射して結果を調べるという、恐るべき人体実験を密かに行っていたということが明らかになった。したがって、初期の段階から放射線による影響が器具されていたにも関わらず、目的遂行のために、外部被曝以外の放射能の影響はさほど心配する必要はなく、低線量の内部被曝は健康被害を生まないとの立場をとってきた。広島・長崎の原爆被害に対しても、最初の2,3週間で死すべき人は死に、後から放射能によって「命を奪われることはない」と言い張ってきた。ECRRの等の機関の主張が発表されるまでは「内部被曝」の危険性が叫ばれる機会はあまりなかった。現在では「ベトカウ効果」の理論がある程度認められるようになってきたし、様々なデータからも内部被曝は「低線量」でも継続すれば重篤な被害をもたらすことが認知されつつある。また原子炉で使用済みになった、劣化ウランであっても、兵器として使用された結果、各国で時間の経過とともに悲惨な被害が出ていると報告されているが、それを検証することは現在でも困難さがある。しかし、現地で多くの被害者を見てきた著者の言葉を聞く限り、劣化ウランの影響も内部被曝の例として十分考えられる。原発事故の影響も、仮に直接外部被爆による被害者がでなかったとしても、時間を追って内部被曝による犠牲者が発生することは十分予測されるし、チェルノブイリの事故でも莫大な数の犠牲者が発生している。しかもICRP予想より内部被曝を厳しく評価するECRR案によればさらに膨大な数の犠牲者が発生すると予測されている。我が国においても、福島第一原発事故から2年2か月経過した現在、今後どれほどの被害が出るか心配されるところであるが、新しい考え方や、過去のデータを総合的に見れば決して楽観視はできないと言わざる得ないのではないだろうか
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by tomcorder | 2013-05-16 22:41 | 日記
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「渡辺治の政治学入門」   渡辺治  2012年11月刊

作者は一橋大学名誉教授渡辺治氏。氏が大学を退職後最初の著述である。主に民主党政権の成立から崩壊までの変遷を、「新自由主義と反構造改革の動き」との観点から分析・解説をした一連のシリーズである。氏の説によれば自民党も民主党も「保守2大政党」の構想にのっとり政権担当政党として歩んできた。ともに保守の枠組みの中での政権のやり取りを想定して存在していたが、民主党政権の成立は、行き過ぎた新自由主義へのゆがみから出た「反構造主義のエネルギー」の表出として、鳩山政権の誕生を見たという。しかし、保守の枠組みから果敢に飛躍しようとした鳩山政権は、アメリカと財界から猛烈な反感をかい、早々に行き場を見失った。そして管、野田政権とも保守への回帰ともいえる新自由主義的政権に立ち位置をもどし、自民党政治の延長的な政策をとるようになってきた。その結果が消費税の決断であり、TPPへの参加への意思決定であった。しかし皮肉にも自民党よりの政策に変更していったことが自らの政治生命を縮め、政権誕生時の民主党への期待はもろくも吹き飛んでしまった、というのが大方の筋書ということらしい。そして、右からも左からもそっぽを向かれた民主党が大きく後退し、小選挙区制の特性から、「票を減らしつつも」「自民党の大勝」という表向きの結果を出したのが先の選挙の内情だったということらしい。見かけは自民党の圧勝に見えたかもしれないが、実際は民主を離れた票は「維新に」そして「みんなの党」に大きく流れたというのが実態だという。民主から革新政党に移動した票が少なかった、というのも何か問題を秘めていないだろうか。派遣切りや反貧困問題が深刻化する中、反保守勢力が伸び悩む現状というのは、社会が「病んでいる」現れとは言えないだろうか。
しかし筆者は、地道に労働者を中心にした国民目線の政治勢力の結集を呼び掛けている。すでに、新しい時代を予見する連帯のスタイルも見え始めているし、反原発等の今までになかったタイプの市民運動の萌芽も広まりつつある。今後は決して悲観するばかりでなく、新しい運動の広がりを期待したいという点では筆者に賛同したい。
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by tomcorder | 2013-05-14 22:13 | 日記
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  「脱原発から、その先へ<ドイツの市民革命>」    今泉みね子   2013年3月刊

 作者はドイツのフライブルク市在住のフリー環境ジャーナリスト。3.11以降、いち早く脱原発へと舵を切ったドイツ。市民レベルの環境活動で培った草の根運動の力が一気に花を開き、各地で自然エネルギー利用が花盛りである。「原発をやめると電気料金が上がる?」「フランスの原発との関係は?」といった気になる話題に対し、具体的な回答を示していて興味深い。確かにドイツは「環境先進国」と呼ばれ、エネルギー政策に関し、世界の先端を進んでいると言ってよさそうだ。しかし、太陽光発電の技術等に限定していえば、かつては日本が最先端を行っていた時代もあった。技術で一時世界をリードしていた日本がなぜドイツに差をつけられ、一歩も二歩も、いやもっと大きな遅れをとってしまったのは何故か?・・・・本書にはその訳を理解する具体的な解説が時の流れにそって詳しく繰り広げられている。一言でいうならば、自然保護、環境保護に対する国民的意識の高まりと、市民レベルでの民主的なシステムの積み重ねと、それを保障する政治的な枠組みが時代を追って構築されてきた、ということになる。我が国の現在と比べて違うのは、技術の差ではなく民衆レベルの考え方と政治の在り方が根本的に違っているといいえるようである。原発事故を起こした日本が原発に対し一貫性のある政策を維持できないのとは対照的に、ドイツは他国の深刻事故を真摯に見つめ大胆に政策を変更させ再生エネルギー実用化の方向に決断したのである。正に日本とは圧倒的に「政治力」のレベルが異なっている。民主主義の内実の違いともいえるかもしれない。
 先の大戦でともに「敗戦国」となり戦後幾多の困難を乗り切ってきた点では、共通した所もあった国同士であったのに、いつの間にかずいぶん骨組の違う国になってしまった。昨今の我が国は一体どうなってしまったのだろう。何を学んできたのだろう。
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by tomcorder | 2013-05-06 22:44 | 日記
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「よくわかる自然エネルギーと発電のしくみ」
   飯田哲也監修 白鳥敬著
                                                         2013年2月刊
脱原発にシフトしようとする論陣の先端をゆく飯田哲也氏監修の自然エネルギーへの入門的ガイドブック。2011年3月11日の福島原発事故の発生以降、原発に電力の将来を頼ろうとすることの危険が現実のものとなった。今後のエネルギーをどのように考えて行くか、選択を迫られる時期に来ている。作者はもはや原発に「軸足」を置くことを変更すべきとの立場をとっている。そのうえで、現在想定され実現可能なエネルギーのラインナップを幅広く解説し、それぞれしくみと利点、問題点を詳しく述べている。その中で、注目すべき観点をあげ、日本の選択すべきエネルギーや発電方法につき多方面から考察を加えている。
 日本と世界の発電システムの特徴を検討し、日本の電力需給の特徴を強調し、今後のシステムへの提言を繰り広げている。日本は地震、火山の活動が活発な地域に位置しており、自然条件に適した電力の取り出し方を考えて行く必要がある。技術的には獲得されつつあるものと、研究の余地を残すものがあるが、これからは、政治的な方法論が重要なカギとなりつつある。たとえば太陽光発電に関しては日本は世界でも最先端を行く技術を持っていたが、政治的な意志の薄弱さから、ドイツを始めとする先進国に後れを取ってしまった。いかに優秀な製品力があっても、政治の判断力の希薄さから、足踏みをしてしまった。
 これからは、積極的な新しいシステムの意欲的な展開により、現実的なエネルギーの あり方を選択して行くことが望まれる。
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by tomcorder | 2013-05-02 18:42 | 日記