ブログトップ

渡霧吐夢世界

tomcorder.exblog.jp

薄暗く不透明な世に一条の光を求める一こま

<   2015年 06月 ( 2 )   > この月の画像一覧

a0292328_2125518.jpg

「集団的自衛権の焦点」     <限定容認をめぐる50の論点>
                                               2014年    松竹伸幸

 現在国会では、安全保障法案を巡って激しく与野党が対立している。何としても今国会中に戦争法案の成立を図りたい与党は、異例とも言える90日にもわたる長期の会期延長を決めた。戦後最長の通常国会となった。本法案の背骨となる集団的自衛権の容認に関しては、「違憲」であるとの非難がでており、リベラル野党は勿論、広く学者や文化人、有識者、元政治家等々、各界から政府の暴走を止めようとする声明が出されている。本書では、集団的自衛権容認に関わる疑問点や問題点を50の項目に絞り、質問に答える形式で、作者の解説並びに見解を簡潔に述べている。
 国会の内外でも様々な論議を呼びマスコミでも度々話題になった項目について明快な論拠を示し、わかり易く回答している。その基本姿勢は正しく「憲法にのっとって」であり、戦後の歴史を冷静に振り返り、現政権の脱線ぶりを鋭く論破している。
例えば、集団的自衛権が適用される「密接な関係にある国」とはまず米国以外には考えられないが、その米国は日本に対し集団的自衛権の行使を歓迎はするものの、「強要」はしていない。米国艦船を守るとか、「グレーゾーン」での出動とか、政府は苦しまぎれに浮足だった説明に終始しているが、これらは外国から見れば「軍事行動」と受け取られる可能性が強いと筆者は説く。
確かに中国の力任せの姿勢はアジア各国で緊張関係を高めてはいるが、日本の自衛隊が直接出動するようなことが起きれば、話はこじれることはあってもまとまることがないのは火をみるより明らかだろう。今まで我が国は「武力」を持って問題解決に当たったことはない。武力行使のないところに「武力」を使うことなど、憲法上は到底認められない。どんな紛争にも武力が使えると解釈するのは、ルール違反である。
集団的自衛権は国連憲章の理念にも矛盾する考えであり大国のエゴから生まれた、便宜的措置でもある。アメリカが集団的自衛権のもとにどのように侵略行為を行い、間違った殺戮を繰り返してきたかを振り返れば、この考えに組み込まれることがいかに危険であるか明白になってくる。
作者は主張する。「集団的自衛権」ではテロには対応できないと。
日本は70年近く非軍事に徹して国際平和に貢献してきた。この経験こそ日本の主張できる最大の戦略であり、安全保障の中心に置くべきである。
[PR]
by tomcorder | 2015-06-30 21:26 | 日記
a0292328_18562242.jpg


  「東京ブラックアウト」        若杉列   2014年12月刊

 大反響を呼んだ「原発ホワイトアウト」に続く第2弾。前作発表時に話題になった通り、作者「若杉列」氏は現在霞ヶ関のとある官庁に勤務する現役官僚であるという。さぞかし「犯人捜し」が激しい勢いで進められたことと想像するが、その割には以後関連した人物の特定は聞いていない。初作が発表されたころ、某テレビ番組降板騒ぎでマスコミを賑わした元経産省完了のK氏ではないかとの憶測が飛び交ったが、本人がはっきり否定したという情報は流れている。「いずれ顔は割れてくるだろう」との大方の見方ではあったが、今になってもそれに関した情報をマスコミで聞いたことがない。まことに不思議で真偽のほどを疑いたくなる話ではあるが、まさかこの想定事態が「フイクション」だとしたら、それは読者に対する「背信行為」になってしまうだろう。
 「現役官僚」という説明の通りだとしたら、片手間で原稿が書けるほど官僚というのは「暇」があるのだろうか、という批判の目で作品を見たくもなる。フイクションとは言っても内容は実にリアルで、実名こそ出していないものの、まるで現実の政官界の出来事を綴っているかのような「臨場感」に満ちている。おそらく実態もこのストーリーに近い状態で進行しているのだろうと、容易に想像できる。本作品はなかなかのアイデアに触発されたストーリーで、単純に「フイクション」だとするととても好奇心をそそる、スリリングな展開で読む者を楽しませてくれる。しかし、内部事情を熟知した役人の目で綴った、ノンフイクション作品としてみれば、天下を揺るがす大告発ノベルとしての性格を帯びてくる。とても「笑ってはいられない話」になってしまう。
本書は「娯楽本」なのか「告発本」なのか?
スタイル的にはどちらとも取れるだろう。しかし、その内容の構成と生々しい政治の匂いからして、本書は日本の原子力ムラの裏表を描く「風刺本」であり、わが国の原子力行政や官僚社界への告発の書になっている。我々が見ている日々のテレビや新聞の報道の「裏側」はおそらくこれに似た筋書きになっていると思わざるを得ない。
 現政権への厳しい問いかけが続く昨今、「裏の世界」で本書のようなやり取りがされているとしたら、原発は我が国の骨組みを溶かす「亡国のシステム」と言わざるをえない。文字通り我が国は原発とともにメルトダウン、メルトアウトする運命にあることは避けられない。
「世界レベルの安全基準」を超え、再稼働にばく進する我が国の原発政策。落とし穴は限りなく存在する。次回の大規模事故が発生すれば、間違いなく「国の形」が変わる。運が悪ければ沈没ならぬ「日本消滅」の事態になる。
戦争も原発事故も一部の人間の悪意によって始まり、一部の人間は真っ先に逃亡し、責任を免れる場に身を隠す。
 本著は筆者が忙しい日々の仕事の合間を割いて、世に投げかけた、原子力村の闇の「裏側を描き出すガイドブック」のようにも読める。ガイドブックが手に入れば、ひょっとして、間違った道を進み自爆しないような進路を、選択することが可能になるかも知れない。
[PR]
by tomcorder | 2015-06-14 18:59 | 日記