読書日記10月29日(火)
アヒンサー「放射線の衝撃」 <低放量射線の人間への影響>
( 被爆者医療の手引き)
ドネルW.ボールドマン
肥田俊太郎 訳
本書はジェイM.ゴールド、ベンジャミンA.ゴルドマン共著「死にいたる虚構」とともに、原爆症認定集団訴訟において大阪高等裁判所が「低線量放射線内部被曝」を認めた根拠とした意義ある科学文献である。広島長崎の原爆により被曝した人々のうち、投下による直接被爆をしていない「内部被曝」の影響はアメリカからも日本政府からも認められなかった。しかし、この裁判をきっかけとして、以後、連続国側の敗訴となり、「低線量放射能被曝による内部被曝」が事実として認められるようになった。本書は根拠ある論理でひろく内部被曝の実態をあかした記録すべき書とも言える。
「長崎ブラブラ病」等の症状は被爆者の多くが訴えた共通的現象であったが、客観的証拠がないとして、戦後しばらくの間認められることがなかった。しかし本著の作者等は臨床的症候群を多数分析し、「分子生物学的な研究の成果」から低線量放射能でも無視できないことをつきとめた。そして治療の実態として、①放射線被害に対し根本的治療法はないこと。②放射能は有効に除去できないこと③症状を最小限度に食い止めることのみが対応策となること、等を結論づけた。
本書では、現代の核エネルギーに対する総括的傾向、に対しても強く勧告をしており、今後の世界が放射能の脅威に対しどのように対峙すべきか、厳しい提言をしている。
本書の結びとして、Lowell Thomas(1971)の言葉が挙げられている。」
「 遠い月から見れば、地球は驚くべきもの、
息を殺して、それは生きている。
地球は、大きく、複雑で、たくさんの部分が
互いに関係を知らないで、一心に働いている。
それはまるで・・・・・・・・・一個の細胞のようだ 」
by tomcorder
| 2013-10-29 22:31
| 日記